Hachi Note

Enjoy your Tokyo life.

神楽坂のバー・歯車で味わう静寂とウィスキー

その日、私はある御仁に振り回され精神的に疲れ切っていた。男である。といってもさほど親しい間柄ではなく、私が悶々と考え込んでしまうというだけ。土曜だというのにタリーズJavaScriptの勉強をしていた(偉い)けれど、ろくに手に付かない。もう、これは・・・飲むしかない!と思い立ち、私は以前から行きたいと思っていたがなかなか門をくぐる勇気が出なかったあるお店に行くことにした。
 
夜7時頃に神楽坂に移動し、昼間と変わらず蒸し暑い夜気の中、スマホ片手に店を探す。大通りから少し外れた静かな通りにその店はあった。

店の名前は「歯車」。以前「神楽坂 一人 バー」で検索したら出てきたバーだ。ネットの情報によると、とにかく店内が薄暗くて静かなオーセンティックバー、とのこと。メニューや棚にずらっと並んだ酒瓶があるわけでもなく、どちらかというと個性的で尖ったお店らしい、でも食べログ等での評価は高く繁盛しているよう。
ちなみに、私が一人でバーを訪れたのはこの日が初めて。なぜわざわざ最初にそんな難易度高そうなお店を・・・と思われるかもしれないが、静かなの好きだし、暗いのも落ち着くし・・・逆に和気藹々としたこじゃれたバーとか怖くないですか??と思ってここにした。
 
わりと勇気を出して2階に上がり、店の重たい木製のドアを思い切って開けると、店内はかなり暗いとはいえ真っ暗というわけではなく、マスター以外誰もいなかった。とりあえずカウンターに通される。涼しくて暗くて快適・・・そして無音。BGMなどはなし。緊張。「どうしますか」と尋ねられるが、ネット情報通り店にはメニューも酒瓶もない。そして情報通りマスターはとっつきにくい。とりあえず「飲みやすいウイスキーの水割り」を注文する。
 
マスターがお酒をグラスに注いだり氷を削ったりしているのをぼーっと眺めつつ、店内をそれとなく見る。暗くてよく見えないというのもあるのだけど、中はかなり簡素な印象で、カウンターの重厚感ある木製のテーブルには小さなキャンドルがいくつかと、謎の四角い木製の箱がひとつ置いてあるだけ。どちらかというと和風の雰囲気。マスターはどうやらカウンターの向こう側の足元から氷やお酒を取り出しているらしい。とてもシンプル。自室が散らかっているだけに、物がないと頭も心もすっきりするなー、としみじみ感じる。
 
私がぼーっとしているとマスターが「この店はどこで知られたんですか」などと話を振ってくれる。この日はワールドカップの試合のためお客さんが早く帰ってしまって空いているとのこと。「私は全然(ワールドカップ)興味ないんですけどね」とマスター。私もです。
 
全然知らない人とこんな風に話すのは久しぶりで、しかも完全に非日常的な空間だったので、とても新鮮だった。少しすると常連と思しき男性の一人客の方が入ってきたけれど、3人でわいわい談笑・・・というわけではなく、基本的には静かな感じだった。でも私は酔いが回ってくると訳もなく無性に楽しくなってしまい、そのときはウイスキーのグラスに視線を落としながら笑いをこらえるのに苦労した。別に笑ってもいいんだけど、あまりに唐突だったので。
そのうちマスターは例の謎の四角い箱から葉巻を取り出して吸い始めた。それは葉巻入れだったんですね!
ほんと男って地球上にいくらでもいるよなー、と当たり前のことをしみじみと感じた。気楽になった。ほんとに。
 
その日は二杯ほどウイスキーを飲んで辞去。
私がズブズブのバー素人であることを察し、マスターはさりげなくおすすめのお店などを教えてくれたりした。
想像以上にとっても居心地のいいお店でした、ありがとうございました。
 
ああいう普段とは全然違う場所に行くと、心の中を新鮮な風が吹き抜けていくようで前向きになれる気がする。大袈裟に言えば救われる。一人飲みの楽しさを少し知ったよい夜だった。
 
※画像は食べログからお借りしました